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日本学術会議会員候補の任命拒否に抗議し撤回を求める声明

 

 2020年10月19日
全国私立大学教職員組合中央執行委員会



 菅義偉首相が、10月1日、日本学術会議が新会員として推薦した105名の研究者のうち6名を任命しなかったことが明らかになりました。政府はその理由について未だ明確な説明を行っていませんが、研究に対する評価に関して学術会議の推薦者以上に合理的な判断をできる者がいないことを考えれば、恣意的な運用であることは明らかです。あまつさえ、憲法15条の国民の公務員任免権を盾にとってそれを正当化しようとしています。また、今回拒否された研究者は、「人文・社会科学」に所属すべきもので、こうした学問分野を政権が敵視していることを表しており、明らかに「学問の自由」を破壊するものです。

 この問題に対し、同会議の梶田隆章新会長は、10月 2日の総会を経て、理由説明と6名の速やかな任命を求める要望書を提出しました。日本学術会議は、戦前の研究者たちが、体制に異を唱える学者が次々と排斥される中、時の政権のもとめるまま戦争に協力したことの反省に立って誕生しました。そして、「日本学術会議の発足にあたっての科学者としての決意表明」(1949 年 1 月 22 日)では「これまでわが国の科学者がとりきたった態度について深く反省し、今後は、科学が文化国家ないし平和国家に基礎であるという確信の下に、わが国の平和復興と人類の福祉増進のために貢献せんと誓うものである」としました。

それ故に、ときとして、時の政権・政府の政策と異なる意見を表明することもありましたが、多様な研究者から発出される意見を傾聴することこそ、社会の発展に資するのであり、政権・政府の介入があってはならないのです。

前政権である安倍政権のもとで、自衛隊の海外派兵の容認、集団的自衛権を骨格とする安保法制、共謀罪など戦争ができる国づくりが、憲法を踏みにじりながら進められてきました。今回の事案以前にも政権による日本学術会議への人事的な圧力があったとの報道もなされています。

こうした前政権から続く政権の態度や措置は、ひとえに「学問の自由」を脅かすにとどまらず、政府の意向と異なるものは、排除されるという法治国家、民主主義社会の破壊につながります。さらには、この間の安部政権によって、立法、行政、司法の隅々まで「政権の意向」が反映されるようになり、事実上、政権のチェック機能は存在なくなりつつあります。学術会議がどの程度影響力を持っていたかは不明ですが、今回のことによってまた一つ、政府の自浄(「自助」ではありません)機能は低下しました。

モリトモカケ、「桜」のような政府の私物化が「公文書管理」の問題にすり替えられ隠蔽されましたが、今回も「行革」へすり替えられようとしています。
私たちは問題の本質を見逃さずに、菅首相に対し、憲法と日本学術会議法に基づき速やかに 6名の任命を行なうこと、そして日本学術会議および諸学問領域への政権と与党から強まる干渉をやめ、政府からの「独立性」を改めて、明確にするよう要求します。
 

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