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「学校法人ガバナンス改革会議報告書に基づく私立学校法の改正に反対し、学校法人の社会的責任を明確にする幅広い議論を呼びかける」緊急声明

 

 2021年12月24日
全国私立大学教職員組合中央執行委員会



 2021年12月13日、文部科学省の学校法人ガバナンス改革会議(以下、「改革会議」)は、「学校法人ガバナンスの抜本的改革と強化の具体策」と題する報告書(以下、「報告書」)を文部科学大臣に提出した。

 「報告書」は、学校法人の経営をめぐる不祥事が多数発生し、大きな社会問題となっているとして、学校法人にも他の公益法人と同等のガバナンス体制を整備するため、理事会の諮問機関である評議員会に学校法人の経営に関する重要事項すべてに関する権限を付与し、評議員会を最高監督・議決機関として衣替えすること等を提言している。

 全国私立大学教職員組合中央執行委員会は、日大の背任・脱税事件を最大限利用して、学校法人の管理運営を少数の評議員に委ねるという方向性を容認することはできない。また、拙速な法案化と法案の国会提出に断固反対するものである。

 「報告書」の重点は、評議員・監事・会計監査人が業務執行機関である理事会を監視・監督する構造をつくることに置かれている。そのために、評議員については現役の理事や職員との兼任を認めない。役員・評議員の親族・特殊関係者の就任を禁じる。最低員数を理事の最低員数(5名以上)より少ない3名以上とし、任期も理事の任期より長くする。理事・監事・会計監査人の選解任も評議員会の権限とするというものである。

 「改革会議」に検討が要請されていたのは、「新法人制度の改革案」と「規模等に応じた取扱い」の2つについて、私学法改正案のための法制事項を整理するというものであったが、事実上、検討されたのは前者についてであった。

 そもそも、今般の学校法人制度改革議論は、内閣府の「経済財政運営と改革の基本方針2019」で、社会福祉法人や公益社団・財団法人の制度改革を踏まえ、これらと同等のガバナンス機能が発揮できるよう制度改正について検討することが謳われたことに端を発する。20年1月に設置された「学校法人のガバナンスに関する有識者会議」が21年2月に提言を行い、中教審大学設置・学校法人審議会に審議の場が移るはずであった。しかし、「経済財政運営と改革の基本方針2021」が、手厚い税制優遇を受ける公益法人に相応しいガバナンスの抜本改革について、年内に結論を得、法制化するという方針を打ち出したために、21年7月に文部科学大臣直属の「改革会議」が新たに設けられたのであった。こうした文部科学省の右往左往自体に、この間の政治・行政の劣化が顕著に表れている。

 教育事業の実施主体としての学校法人は元来高い公益性を有しており、私立学校振興助成法等に基づく公の助成を受けていることや収益事業以外の学校教育事業については税制上の優遇措置が講じられていることを挙げるまでもなく、運営の透明性を高め、適正な管理運営の確保に努めなければならないのは、学校法人の社会的責任という観点から当然のことである。そして、学校法人と社会との関係を改めて問うというのであるならば、ステークホルダーである社会一般、多様な人々との信頼関係やネットワークを構築し、教育・研究事業を通じて社会的な課題の解決に向けて一層努力するよう組織改革を求めることが必要である。コンプライアンスとガバナンスという文脈だけでは、今日求められる課題に対して、あまりに視野が狭く、問題意識が希薄と言うべきである。

 これは、外部社会とのコミュニケーションの不足から必然的にもたらされたものである。それどころか、学校法人の内部においてさえ、雇用、人事・給与や労働条件をめぐる労使コミュニケーションの不足からさまざまな問題が発生し、社会問題ともなっている。労働組合との関係を通して、職場懇談、苦情処理、労使協議等を量的にも質的にも高めることが求められているのである。その上でこそ、外部社会とのコミュニケーションも可能となるというものだ。

 現行私立学校法では、理事長が評議員・監事を兼務することが可能であることが問題視されてきた。また、2004年の改正で理事会設置が法定されたことにより、理事会の権限が強化され、2015年の学校教育法改正によって大学教授会の役割を教育・研究の領域に限定したことが、理事長の専断や理事会の法人私物化の温床となっているとも言われてきた。

 「報告書」に盛り込まれた改革案は、評議員会に経営権限を集中させるとともに、理事や教職員を評議員から除外し、企業法務や企業監査に通じた外部の人材によって構成することを想定している。そうすることで、創立者一族や理事長取り巻きを放逐することができたとしても、評議員会の独立性・中立性が確保され、監督機能の実効性が保証されるわけではない。善管注意義務を課すだけで利益相反や私物化を排除できるとも思えない。

 さらには、学長(校長)が当然理事の地位に就くという条文(私立学校法第38条1項1号)を廃止し、評議員がすべての理事の選解任の権限を持つならば、評議員会が直接に大学に対するガバナンスを行使することが可能になる。

 私学助成等を含めた大学への財政支援の配分のメリハリ強化、10兆円規模の大学ファンドの創設と運用、国公私立の枠を超えた統廃合が迫る現在の学校法人改革案であるからこそ、その動向を注視しない訳にはいかない。また、大学等を設置する文部科学大臣所管の学校法人だけでなく、都道府県所管の学校法人についても会計監査、情報開示等を除いた事項の適用が予定されていることから、事は全私立学校に関係する問題である。また、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議において、国立大学の「新しい最高意思決定機関」の設置が議論されていることから、事は国公私立大学全体に関係する問題である。組織不祥事が起きた際に、それを防ぎ切れなかったマネジメントの責任を問う陰で、政権与党が学校教育を国家戦略の手段とするために、策謀を着々と進めることを許さない取り組みを強化していかなければならない。

 

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