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「大学の自治を決定的に破壊する国立大学法人法の改正案に反対する」緊急声明

 

 2023年11月24日
日本国公立大学高専教職員組合
日本私立学校教職員組合全国私立大学教職員組合



 この11月17日、大規模な国立大に運営方針の決定などを行う合議体の設置を義務付ける国立大学法人法の改正案が衆院文部科学委員会で賛成多数で可決された。13項目の附帯決議もあわせて可決された。 この法案に対して、大学教員を中心として「大学の根幹が崩れる」などの批判が上がっている。

 今回の改正は、もともと国の大学ファンド(10兆円ファンド)で支援する「国際卓越研究大学」(東北大)のガバナンス(組織統治)強化と、国立大学法人の統廃合(東工大・東京医科歯科大)を受けた別表改正を目的とする法案であった。

 法案作成段階で、このガバナンス強化の部分が、学生数や収入などが一定規模以上の国立大(「特定国立大学法人」)に突然拡大され、当面は、東北大、東京大、京都大、大阪大、東海国立大学機構(名古屋大と岐阜大)の5法人が対象となる見込みとなった。

 これらの大学に新たに設置される「運営方針会議」は、会議は学長と文科大臣の承認を経た学内外の3人以上の委員で構成され、中期目標・中期計画や予算について決議する権限、学長選考・監察会議への意見具申権などを持つ。学長の任免権に加え、学長を含む「会議」の委員の承認権を文科大臣に与えるという、政府権限の拡大強化であり、大規模大学を完全に政府・文科省のコントロール下に置く計画である。

 問題点の一つは、大学10兆円ファンドを給餌とした文科省直轄大学への誘導である。「指定国立大学法人」以来、政府は国立大学をランク分けして区分することに躍起となっている。今回、国際卓越研究大学、特定国立大学法人、それに準ずる大学、それ以外の大学と国立大学を階層化し、位置づけに応じた運営費交付金をはじめとする予算配分、支援策を正当化し、政府に従順な大学へと再編する方向性を示した。学問の自由、大学の自治は大きく損なわれることになる。

 次に、大学のガバナンスを揺るがす組織改編である。すでに、国立大学には、役員会の他、中期目標計画を決める経営協議会、教育研究評議会、学長選考・監察会議などの大学統治に関わる組織がいくつもある。ことに学長選考・監察会議は2020年の法改正で名称と役割の改変が行われたばかりである。こうした錯綜する組織に屋上屋を重ねる「運営方針会議」を設置することは、責任と権限の所在を不透明にし、大学全体での合意形成を不可能にし、結局は学長による独裁の道を開くことになる。

 こうして、文科省の廊下に、高名な学者である国立大学の学長たちが並んで裁定を待つという、ドイツ第二帝政期のプロイセンの学術政策を彷彿とさせる構造ができあがる。時の政府のために学術研究が奉仕するのである。

 これらの懸念を背景として、法施行に際して、政府に配慮を求める13項目の附帯決議が可決されている。具体的には、運営方針会議の審議事項が教育・研究の内容や方法に及ばないようにすること、会議の委員を選ぶ際には文科大臣は言論活動や思想信条を理由に恣意的な承認拒否をしないこと、大学の自主性と自律性に留意して、拒否する場合は理由の丁寧な説明に努めること、選ばれた大学だけでなく他の国立大学にも基本的経費が運営費交付金として措置されることなどを求めている。附帯決議のこのような懸念は当然のことである。

 私たち日大教・日私教私大ユニオンは協同して、今後もすべての市民に開かれた大学づくりをめざし活動する観点から、大学の自治を決定的に破壊し、国立大学を政府の管理下に置くことを企図した今次国立大学法人法改正案に反対する。

 

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